Vol.3 | カフェオーナー

「透明性、持続可能性のある “ものづくり” 」坂尾 篤史 (後編)

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“気付きから広がる、無限大の可能性”

お店を経営していく中で大変なことはたくさんあったのですが、一番苦労したのは“コーヒー文化が根付いていない” と気付いた時でした。今でこそ、“ブラックコーヒー” って皆さん飲んでくれるようになったじゃないですか。でも当時は、大手のチェーン店で販売しているコーヒーのイメージが一般的だったので、マキアートはキャラメルがトッピングされているものだと認識している人たちもいました。そのため、ブラックコーヒーだけの取り扱いや、味や値段に対して不満を抱く方もいて、挙げ句の果てには“趣味でやっているお店” と勘違いされることも少なくありませんでした。

バリスタの修行をしている時は、“世界チャンピオンがプロデュースしたお店” ということもあり、客足は絶えなかったんです。一緒に働く仲間やそこに集まってくる人もコーヒー好きだったので、コーヒー文化がここまで根付いていないことに気付いていなかったんです。だから、とにかく知ってもらうことから始めなくてはいけなかったので、業種問わず興味を少しでも持ってくれる人がいればワークショップやケータリングに出向きました。当時はまだやっている人も少なかったので、知ってもらえさえすれば、必ず分かってもらえると信じていましたので。

“本質、を追求すること”

2012年の3月頃、まだ無名だったお店に取材の依頼が舞い込んだんです。取材をしてくれたその方とはプライベートでも親交をもつようになって、会うたびにいつも「篤史くんはコーヒーをやっているのだから、本質的に物事を考えなくてはダメだよ。食べるものや身に付けるものも、自分が本質的になって初めて周りが共感してくれるようになるのだから」 と言ってくれました。その方のおかげで、コーヒーをやっている理由を改めて深く考えるようになりましたね。後から知ったのですが、業界ではかなり名の知れた敏腕編集マンの方だったようです。

1年以上は経営的に苦しい時期は続きましたが、そういった出会いもあって某有名雑誌に特集が組まれたのをキッカケに、他の媒体でも特集が組まれるようになりました。そこから一気に盛り上がったのを覚えています。

“渋谷から生まれる、新たなコーヒーカルチャー”

1店舗目の出店でコーヒー文化が根付いていないことは分かったので、“自分たちで作るしかない” と思ったのが渋谷出店のキッカケです。人がたくさん集まって、新しいカルチャーが生まれるならここだなって。毎日コーヒーを飲んでもらえるように、オフィス街の立地で近隣の住民も気軽に足を運べ、尚且つ駅から近いエリアを条件に探しました。その時に運良く見つかったのが、道玄坂に店を構える『アバウトライフ コーヒーブリュワーズ』 です。本当にとても良い物件に恵まれて、そこに出店したことで周りの反応も大きく変わりましたね。

これまでは自家焙煎で豆の種類を自分で選ぶことなんてなかったですし、テイクアウトがメインのお店なんてものもありませんでした。でも、みんな僕らのスタイルはやりたかったんだと思うんですよね。ただ、夏は暑いし冬は寒いしで結構大変。(笑) だからこそ、これまで誰もやってこなかったんだと思います。

それでも僕たちがやり続けてこれたのは、奥沢で出店した時にあまりにもコーヒーの文化を知ってもらえてなかったから。だからこそ、“自分たちの苦労よりも無いものを作り出したい” っていう想いと“人の集まる場所を作りたい” っていう想いが強かったんじゃないかなって。

“ハイクオリティーなコーヒーで、

自分たちのチームと生産者、そしてお客さんの生活を向上させる”

はたらく上で意識していることは、「自分で考えて動ける」 ことです。やっぱり、誰かにやらされているっていうよりは自信を持って自分で選べる環境を作りたいですね。店のスタッフに恵まれているのも、コーヒーが好きで繋がっているんだと思います。なので、トップレベルのコーヒーをキープしている間は、スタッフも良いと思ってくれるんじゃないかと思います。自分を含めた中心のメンバーは、常に良いものを作り出して、良い食材を手に入れるように心掛けていますね。

だからこそ素材選びからこだわって、その過程で極力自分たちが目にできるものを選ぶし、例えそれが遠くてもしっかり見に行き、それをしっかりお客さんに伝えることも大切にしています。そうじゃないと広まらないし、“本質的なものを作っていかないと残らない” と肌感で感じているので、ものづくりをしているっていう感覚は大切にしています。

スペシャルティコーヒーは、トレーサビリティとサスティナブルの考えを重要視しているので、仕事でも普段の生活でもそういった思考で物事を捉えています。そうすることで、お金儲けよりも先にその判断基準があるので、他の人とは少し違った思考なのかもしれません。

将来的には、自分たちのビジネスを通して何かしらの社会貢献はしたいねってみんなで話をしていますね。まだ漠然としていて、それがどれくらいの規模なのかは分からないですが、自分たちが儲けるっていうよりかは、それを還元できるような仕組みや会社づくりをしていきたいと思っています。

坂尾 篤史
カフェオーナー
“スペシャルティコーヒー” の文化をコミュニケーションに東京のカフェ文化を牽引する坂尾氏。自ら経営する「ONIBUS COFFEE (オニバスコーヒー) 」 では、焙煎・海外の農園視察・豆の買い付けを徹底して行う。“丁寧な一杯で、暮らしに豊かさを” をコンセプトに掲げ、サスティナブルなマインドを元源にカフェ文化を日本に広める彼の活動を通して、働きかたや生き方に対する想いを伺った。