Vol.10 | GREE Ventures

「“個の時代”で活躍するために、本当に必要なこと」堤 達生 (後編)

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堤 達生 (TATSUO TSUTSUMI)

日本有数のベンチャーキャピタリスト。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)や投資会社を経て、株式会社シーエー・キャピタル(現サイバーエージェントベンチャーズ、サイバーエージェントFX(現YahooFX)の前身)の設立を手掛ける。その後リクルート勤務を経て2011年グリー株式会社に入社。グリーベンチャーズを立ち上げた後、2つのファンドの設立・運営を担当。堤氏のこれまでの経験から培われた働きかたについて伺った。

 

—ソーシャルゲーム全盛期、グリーとの出会い

リクルートは楽し過ぎました。だって潰れないじゃないですか。自分が休んでもテレビつけるとホットペッパーやじゃらんのCMが流れてて、会社は余裕で回ってる。大企業はすごいな~、いいな~って。途中シリコンバレーに行かせてもらったりして足掛け5年いました。

でも、あ、違った。僕VCやるんだった!と37歳で思い出しまして。

自分でファンドを作るか否かしばし悩みました。その頃、三和総研時代に同期だった渡辺洋行さんB dashベンチャーズCEOも独立を画策されていたんです。お互い「どうするよ」と話をしました。渡辺さんは着実に準備していたけれど、僕は渡米していたこともあり充分な準備ができてない。

そんな折、2011年初頭、ソーシャルゲームが大ブームに。僕はゲームが苦手で時代についていけてなかったですが、当時飛ぶ鳥を落とす勢いのグリーという会社からVC事業を立ち上げないかというお誘いがありました。

—ベンチャー・キャピタリストとして花開くとき

それが、今も籍を置いているグリーベンチャーズです。僕はグリーの社員として参画しましたが、そこでとてもいい投資をさせていただきました。最初に投資させて頂いた会社が、1年半くらいでIPOしたんです。それが結構なリターンになり、ハイパフォーマンスを上げられました。まあ、マーケットの環境に助けられただけですけどね(笑)。

その後も投資は順調に進み、最初にお預かりしたお金を投資しきったタイミングで、2014年に現在運営しているファンド(AT投資事業有限責任組合)を設立する運びになります。僕自身、グリー社を退職して個人のファンド運用責任者(GeneralPartner)として、現在もファンドの運営に携わる形になりました。

ちなみに現在は2号ファンド(AT投資事業有限責任組合)の運用に入っています。

これまでもスタートアップへの投資はしていましたが、今のポジションとは、自分の中で明らかに違います。以前はバックにある会社のアセットやブランドを借りてのポジションでしたが、今は自分のクレジットで資金を集め、自らリスクを取って投資をしています。

40歳にして、晴れて本来なるべき姿になれたと思いました。ようやくベンチャー・キャピタリストとしての一歩が踏み出せたかなと。21歳の時に会ったベンチャー・キャピタリストに、「いろんな経験をしてからおいで」と言われたことは、今になって振り返ると本当にそうだなと思います。

さまざまな体験を経て20年掛かって、ようやく自分もベンチャー・キャピタリストと名乗れるようになったなという感じです。 

—投資先の経営者と伴走する

ベンチャーキャピタリストの仕事は、よく総合格闘技に例えられます。会計も法律もマーケティングも組織・人事も経営戦略もオールラウンドに把握し、「何でもこい」で投資先をサポートしていくからです。

僕らのファンドは、経営のお手伝いという意味ではかなりハンズオンスタイルを標榜していて、僕自身も相当にコミットするし、ウチの社員をフル常駐させることもある。とくにシードステージの会社は目指すべき方向性やKPIがふにゃふにゃしているので、ガッツリ入ってプランを練り上げ、どうしたら数字を伸ばせるか必死で考えます。

僕は基本的に経営チームと話をするのですが、みんな意思決定が苦手。でもダメなんですよ、経営って常にどちらかを選ばなきゃいけない。

例えばA案を採るならB案は採らない。意思決定すると何かを捨てなきゃいけないんですね。皆それが怖いというか、どっちも手放せず決められない。だから時勢とか過去のデータとか客観的な判断材料を提供しつつ、きちんと意思決定をしてもらうのが僕らの役目です。そして後押しをしてあげる。

—経営者もサラリーマンも、“問いを立てよ”

これは経営者に限ったことじゃなく、どんな立場でも一緒です。サラリーマンをやっていたら自分で決めなくても、上司に従えばいいようなことがありますよね。だけど、これからの時代ってそれではダメだと思うんです。

最近個人のエンパワーメント(能力開化)が謳われていますが、やはりを際立たせていかないと例え雇われていても生き残れない。

自分で考えて、こうしたいと言うことによって初めて上司と正しい関係を築けるし、そういうコミュニケーションを円滑にできる人が、サラリーマンの中でも或る種スターサラリーマンになっていくと思います。

リクルートで勉強になったのは、「お前はどうしたいんだ?」と必ず聞かれることです。普通は「こういう案件がある。だからこうしろ」ってオーダーがくるじゃないですか。でも「どうしたいのか自分で考えろ」というマネジメント・スタイルだった。それがボトムアップに繋がって企業の活力を生んでいました。

意思決定というと大袈裟に聞こえますが、要するに自分で考えるクセをつけること。僕は「問いを立てる」と表現しているのですが、情報を鵜呑みにせず、本質的に何が問題か見極めて解決する。

いい問いの立て方だと、いいアウトプットが生まれるはずなんですよ。そういう訓練ってこれまでの日本の教育にあまり無かった部分かなと思います。今更ですが、そういう意味では哲学やっててよかったって思います。結果的に ()

—堤氏が見据える、これからの日本の生産性を上げていく投資先

これからは、個人のエンパワーメントをもっともっと広げていきたいと考えています。日本はこの先人口が減少し、1つの会社で9時5時という従来の仕事スタイルでは生産性が上がらず、国力が落ちてしまう。

そこで、個人が複数のプロジェクトベースで働ける環境を整えたい。

ネットやITのツール、クラウドソーシングは正にそのための手立てだと思いますし、そういうものに投資をして、個人がより輝ける新しい働き方をつくりたい。それは近い将来必ず叶うと信じています。

 

—流行に左右されない、仕事のパフォーマンスを上げる一着

ファッションは好きです。とくに昔はトム・フォードが大好きで、彼の作るブランドばかり追いかけていました。最近は嗜好がシンプルになってきて、流行りすたりなく体型をきれいに見せてくれる服がいいですね。

もっとも体型のバランスが悪いと、どんなオシャレな格好していても活きてきません。この2年ほど、ピラティスと加圧トレーニングで体幹を強化しています。中から鍛えるのが、オシャレに着こなすための基本かなと思います。FABRIC TOKYOに新しいデニム地が出来たと聞いて、「それいいじゃん!」と即オーダーしたのがこのスーツです。

やはりきちんと採寸して作っていただいているので、驚くほど動きやすい。スーツなのにまったく疲れないんですよね。政府奨励のスニーカー通勤にも合うし、夜の会合にも映えるし、本当に有り難い一着です。

堤 達生
GREE Ventures
堤達生(つつみ たつお)
日本有数のベンチャーキャピタリスト。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)や投資会社を経て、株式会社シーエー・キャピタル(現サイバーエージェントベンチャーズ、サイバーエージェントFX(現YahooFX)の前身)の設立を手掛ける。その後リクルート勤務を経て2011年グリー株式会社に入社。グリーベンチャーズを立ち上げた後、2つのファンドの設立・運営を担当。独自の経験から培われた働きかたについてお話を伺います。