Vol.13 | リーマントラベラー

「サラリーマンでいることを選択するサラリーマン。会社を辞めない自分らしい働き方」東松 寛文

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「週末で世界中を旅するサラリーマン」として、6年間で48か国99都市に渡航。TOEICは575点につき、海外ではもっぱらボディーランゲージだと豪語する東松氏は、2016年に『地球の歩き方』から「旅のプロ8人」に選出されるなど、サラリーマンを続けながら旅をするというスタイルで、精力的に活動の幅を広げている。旅のお供はダブルのスーツ!日本一スーツの似合う旅人・東松氏が、今も旅を続ける理由とは?

撮影:上甲 尚弘 取材:森本 萌乃 (FABRIC TOKYO)

“わくわくが不安を上回ったから、始められた”

「リーマントラベラー」今でこそ少しずつ知って頂いたり、メディアも出させて頂いていますが、ブログを始めた頃はとても怖かったしめちゃくちゃ恥ずかしかったです!ブログを立ち上げて世界を一周しよう、と決めたのが2016年1月、そこから不安で20日間で120人の友人や先輩に自分の企画を相談しました。ダサいでしょ?心配性なんです意外と、笑。

でも結局のところ、相談しても不安は無くならないので意味がないということに気がつきましたね。どれだけ人に話してもわくわくが不安を上回るので、やるしかないと決心できたんです。

–よくある話ですが、入社後の配属先は希望ではない部署に。

高校生の時から楽しいことや場を盛り上げることが大好きで、勉強より文化祭の映画製作や、プライベートでのバンド活動に力を注いでいたので、全く勉強をしていなかったですね、笑。大学時代もアメリカンフットボールに熱を入れすぎて、就職活動もギリギリになるまで本腰を入れて活動していませんでした。

広告代理店への入社は、父親にアドバイスをされたのがきっかけです。お前に向いている、と聞いてから広告代理店の仕事について調べてみるとものすごく興味が湧いて、結果、今の会社に入社させてもらいました。

でも、私が憧れたのは広告代理店のクリエイティブ業務。実際に配属されたメディア部門は、自分が思い描いていた仕事内容とは全く違っていました。今となってはこの時の経験にすごい感謝しているのですが。

–何気ないメールのやりとりも、PV数を稼ぐ気持ちで心を込めた。

どうやったら仕事を楽しくできるか考えて、毎日働いていました。基本ポジティブなんです。私の部署では、その時代1日に500件以上のメールのやりとりが発生するような業務内容だったので、この経験を通じてメール対応の勝ち筋を見つけました。

仕事って大きく2種類だと思っていて、「この仕事超早く終わる」「この仕事超面白そう」のどちらか!相手に瞬時にこれを感じ取ってもらえるよう、ファーストビューで読み手の心を掴むことを心がけていましたね。キャッチーなタイトルをメールの件名につけたりとかね。この時の経験が文章を書くスキルとなり、きっと今の活動につながっています。

正直なところ、個人的にはやりたい仕事ではありませんでしたが、振り返って考えてみると、やりたくない仕事を任されたからこそ、自分の限界を超えることができたのではないかと確信しています。

–夢がここにない!!気が付いたときに「旅」へと導かれていた。

そんな私にも挫折があって。

アラサーに差し掛かり、会社の先輩がSNSに自らが関わったCMをアップされていて、それに対する「いいね」に対して違和感を覚えてしまったんです。やっていることは素晴らしく、私がやりたいクリエイティブ業務そのものなのですが、その投稿を見た時に、自分が達成したいゴールではないことに気づきました。

この先20年頑張ったとして、その結果みんなから「いいね」を200もらえたとしても、それは自分にとっては物足りなく感じたのです、生意気ですが・・・このまま働き続けて、完成したCMに喜びを感じたとしても、世の中には結局のところクライアントの制作物として知られることになるので、自分の物ではないという感覚がぬぐえなかったのです。

そこで、会社の中には自分のやりたいことはないと思い、外に目を向けることにしました。外で何をやりたいかを考えた時、真っ先に思いついたのが「旅」でした。

 

“「リーマントラベラー」- 自分らしさは、強みの掛け合わせだった”

私は、面白い体験を求めたり絶景が見たくて旅行をしている訳ではなく、いろんな人の生き方を見たくて旅をしています。あとあとこの理由について考えてみると、『生き方については日本で教わったことがないから』ということに気がつきました。

世界には色々な生き方をしている人がいます。それに対して日本は、サラリーマンになったほうがいいと、知らないうちに刷り込まれています。世界へ行くとさまざまな生き方が尊重され、とにかくみんな楽しそうに生きている。多様性を知らずに、サラリーマンにしかなれないと思うことはすごく勿体無いことだと感じました。

リーマントラベラーとして活動する前から、自分の強みは人よりかなり旅行に出かけていることでした。そこに、激務の代名詞として知られる大手広告代理店にてサラリーマンをしていることを掛け合わせ、さらには新入社員時代のメールのやり取りで培った文章力を活かす。

ここに自分の夢がないと気付いた時、自分の持つ力全てを集結させて始めたことが「リーマントラベラー」です。

–週末香港「佐々木希ちゃんになりきってみた」

ブログを多くの人に知っていただくきっかけになった投稿が、「佐々木希ちゃんになりきってみた」。これは、女優の佐々木希さんが雑誌ananにて香港の街を巡る特集が題材なのですが、ananが発売された翌土曜日にそのまま香港に行って、特集と全く同じスポット、コースをまわって写真を撮りました。これが意外と反応がよく、結構ブログのアクセス数が伸びたんです。

佐々木希さんバージョンでは、最後インターコンチネンタル香港のプレジデンシャルスイートに行くんですけど、僕の場合は1泊130万円くらいする部屋だったので撮影を断られてしまったというオチがありました。

しかしその後 『anan 香港 佐々木希』と検索したら半分は佐々木希さんの記事がヒットするんですが、半分は私の画像がヒットしまして、それを見たホテル側が、「この前は断ってしまいすみませんでした。もし、今度機会があったらいらしてください。泊まることはできないですが、部屋をお見せすることはできるかもしれません。」と連絡をくださったんです。

そこで翌々週にまた香港に行き、実際に部屋を見せてもらい佐々木希さんになるという夢が叶いました。

–奇跡に期待しているから、旅先での予定はほとんど決めない。

週末だけの香港旅でそんな奇跡に遭遇して以来、リーマントラベラーとして数々の奇跡を起こしてこれた気がします。だからこそ、旅では予定を詰め込みすぎないことを私のモットーにしているんです。現地での予期せぬトラブルやハプニングまで楽しむ。すると奇跡まで起こる。それが海外旅行の醍醐味ですね。

あ、でも旅先で決めている数少ないことの一つが、現地のクラブに必ず行くこと!生き方をみるためには、分かりやすくクラブで踊るのが一番だと思っているので。私お酒をほとんど飲まないのですが、旅先では決まってクラブに行きます、一人でも、笑。

 

“会社のせいにしない「生き方」を発信したい”

リーマントラベラーの活動を始めて、本業の広告代理店業務にもいい効果がたくさんあります。まず、仕事でクリエイティブなことをしている社内の人たちから、これまでは見向きもされなかったのに面白いと言ってもらえる。クリエイティブに憧れていた私としては本望です。

他にも、後輩教育に変化ができましたね。これまでは、誰でもできることができるような、レベルの高いジェネラリストを育てようとしていたのですが、今は、できるところを伸ばしてあげて、できないところを守ってあげられる盾に私がなれればなと。私が好き勝手やっているの見て、話を聞きたいって言ってくれる後輩がいたり、逆に仕事のフォローをしてくれる後輩がいたり、持ちつ持たれつ、社内でいい人間関係を築けるのは嬉しいです。

–会社を辞めようと思ったことは、ない。やりたいことはできるから!

リーマントラベラーは、会社を辞めずにできること。だから今のところ、辞めようと思ったことはありません。会社への感謝もあります。そして、私が元々憧れていたクリエイティブの領域については、正直まだ社内でたどり着けていません。それでも、「リーマントラベラー」という名前をつけて、文章やロゴを考えて、発信する。この活動そのものが気が付いたらクリエイティブでした。

やりたいと思っていたことを外でやってみたら、意外とできてしまった。

だからこそ私が伝えられるメッセージは、社内でやりたいことができなかったとしても、外に出ればできるんだということですね。

東松 寛文
リーマントラベラー
東松寛文(31歳)/リーマントラベラー・作家/平日は広告代理店に勤務する傍ら、週末で世界中を旅するサラリーマン/日テレ『ヒルナンデス!』、TBS『ニュースキャスター』等メディア出演多数/東洋経済、CLASSY.等で連載中/著書『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』