Vol.18 | カヌー選手

「目指すのはカヌー界の土方歳三さん、かな。」

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インタビュー:張亨先(FABRIC TOKYO) 文章:山本玄(FABRIC TOKYO)

写真:上申尚弘(FABRIC TOKYO)  ヘアメイク:長谷川廣樹 (HIROKI HASEGAWA) 

 

「はたら区」とは?

「はたら区」は、毎回ゲストを迎えFABRIC TOKYOの社員が働き方について考えるインタビューメディアです。ゲストに「自分らしく働く仕事のヒント」を学び、FABRIC TOKYOからは世界に一着だけのオーダースーツを贈ります。

 

 

 

カヌー選手  羽根田 卓也

高校卒業後、単身でスロバキアに渡り、現地の大学に拠点を置いてトレーニングを積む。多くの海外大会にて好成績を収め、アジア初のカヌー競技でメダルを獲得した一流アスリートだ。また、鍛え抜かれた肉体美と甘いマスクのギャップは、「ハネタク」の愛称で、スポーツの枠を超えた幅広いファン層からも親しまれている。多くの注目や期待を背負い大舞台に挑み続ける羽根田さんだが、今回「はたら区」では、プレッシャーに打ち勝つ秘訣やカヌーに懸ける想いなど、内に秘めたる熱い想いについてたっぷりと語って頂いた。

 


 

 

 

 

「カヌーを通して土方歳三さんになりたい」

-土方さんのように純粋に目的に向かって行きたい

小さい頃から歴史小説がとても好きで、新選組土方歳三さんの本を読んでとても刺激を受けました。

幕府の将来や日本の未来のためではない、ただひたすらに近藤勇さんの大名になるというたった一つの大きな夢を叶える為、全てを犠牲にして邁進していく純粋な生き方がかっこいいなと思い、自分もそうあろうと意識して行動しています。

自分と土方さんを照らし合わせたとき、僕にとってのたった一つの大きな夢、それはカヌーで世界に勝つ事だと思っています。だからこそ10代のうちから単身でスロバキアに行ったし、世界一の努力をしてきた。これからも世界に勝つという目標のために、自分の全てを賭けていく覚悟があります。

カヌーって正直マイナースポーツですよね、僕ももちろん感じています

-メジャースポーツがちょっと羨ましい

他の競技に対しての嫉妬ではないですけど、人気のあるスポーツはちょっと羨ましいなっていう本音はあります。

例えば知名度の面だけでなく、カヌーのようなマイナースポーツだと、たとえオリンピックに出場していても資金が足りずに競技を続けられないということも日常茶飯事なんです、僕の場合は過去に2回もありました。こういう時、メジャーなスポーツだったら競技に全力を注げるのではないかと考えたことはあります。

自分の努力だけではどうしようも出来ない事に対して、報われない気持ちは何度か感じてきましたが、逆に自分がいることで、今後カヌーというスポーツの地位向上に少しでも貢献できるのであれば嬉しいですね。僕自身は普段から自分を冷静に見つめるクセがあるので、こうした状況に対してネガティブな感情になることは滅多にないです。

-上手くいかない時こそ俯瞰してみる

スポーツの世界において、努力しても結果が出ないことの方が多いのは当たり前。だからかもしれません。僕は、自分を俯瞰してみることを大切にしています。

先ほども少しお話したように、自分では世界一努力している自信があっても、だからって必ず世界一になれるわけではない。1人よがりにならずに周りを見渡し、自分の環境、練習方法、努力が正しい方向に向かっているかを見ることで、心のバランスを保つことが大切だと思うんです。僕の場合だと、ライバル選手のカヌーの漕ぎや練習環境だけでなく、選手の私生活の振る舞いまで細かく観察しますね。そうすることで、自然と自分がライバルに敵わない理由が見えてくるんです。

自分を俯瞰して、ライバルと比較する。これさえできれば、あとは自分に足りないところを埋めていくだけです。

「今だから言える、なかなかカヌーを好きになれなかった」

-カヌーが辛かった最初の5年間

カヌーが好きな今だからこそ言えますが、始めた当初は好きにはなれなかったんです。9歳からカヌーを始めたんですが、元々カヌー選手であった父が、僕をカヌー選手にさせるためにかなり厳しい練習を詰め込んでましたからね。激流の中で行うスポーツなので、水流や転覆など水への怖さが拭えず、カヌーを漕ぐのは辛かったです。夏はまだいいのですが、寒い季節はこの恐怖に加えて川の冷たさもあいまって大変でした。

ずっと、競技の面白さに気づけずに辞めたいと思うことがよくありましたが、中学2年生の時に初めて選手権で優勝した時の「勝つ」という感情を通じて、カヌーをどんどん好きになっていったんです。どのスポーツにも共通して言えると思うのですが、試合に勝つ、この感覚は最高ですね。

それからは、カヌーという競技そのものも楽しめるようになりました。水上ならではの爽快感、水を切ったり、波に乗ったりすることを、怖いではなく気持ちいいと感じられるようになっていきました。

-高い世界の壁超えるには海外に行くしかない

日本で少しずつ結果を残し始めた時、海外を意識し始めました。スロバキアに行こうと決意したきっかけは、高校3年生の国際大会です。すごく手ごたえのある大会だったのですけど、同時に危機感を覚えた大会でもあって。

危機感、というのは日本と世界の練習環境の差に対して感じましたね。このまま日本で同じように練習していても、世界との差は開くばかりと焦る気持ちから、カヌー世界一のスロバキアに行くことを決めました。

世界と触れることで、技術・フィジカル・メンタルを常に強い選手と比較できるようになり、自分の立ち位置が逐一分かるようになりました。そして日本では冬でもカヌーの練習をしていましたが、スロバキアでは冬は陸上トレーニングのみなんですよね。これはかなり印象に残っています。

いつかは日本でも、スロバキアと同じレベルの練習環境を整えたいと感じています。その為には、今後自分の能力を高めるだけでなくカヌーをメジャースポーツにする為に認知度をあげる必要性も感じました。

「どんな理由であれ、カヌーが注目されるきっかけをつくれれば」

-2020年は、多くのアスリートにとって勝負の年、僕自身も楽しみです

最近ではテレビに出演させていただき、ありがたいことに「お洒落」とか「イケメンアスリート」とか呼ばれる機会も増えて素直に嬉しいです。さらに今年は、ベストドレッサー賞のアスリート部門で選出して頂くなど、スポーツ以外でも評価を頂けるのは光栄に思います。カヌーで成果を出した結果に付随して、多方面で声をかけていただける機会が増えてきているので、僕を知ってもらう入口は、もはやカヌー競技ではなくテレビやSNSの方が多いかもしれませんね(笑)

来年は大きな国際大会が控えています、まずそこで、後悔しない結果を出したい。どのスポーツ選手も共通の想いできっと今練習を重ねてますよね。僕は、その先も見据えて、来年も再来年も、カヌーの最前線で戦いながら世界で勝てる選手になりたいです。

「ベストドレッサー賞の授賞式で着用する、とっておきの一着を」

-世界中から愛されるmade in Japanの老舗工場・葛利毛織の生地をシンプルに

今回の授賞に当たって、スーツは特別感のあるものにしました。黒だとフォーマルすぎると感じたのでダークネイビーにして、さらに、華やかな場でも見劣りしないように光沢のあるシルクウールの生地「KUZURI」を選びました。仕上がった時の滑らかさとフィット感には感動しましたね。ただ、主張しすぎるものは性格的に苦手なので、ネクタイの色をネイビーで揃えたりとバランスをとってみました。

-サイズはもちろんデザインの幅広さに感動

オーダースーツは、正直サイズを合わせるだけだと思っていたんですが、簡単に自分好みのデザインにできる事に、サイズのフィット感以上の驚きがありました。既製服では選べない裏地やボタンホールの色をこんなに簡単に変える事ができて、とても印象的でした。

-体のラインがきちんと出せるのもオーダーならでは

サイズに関しては、体のラインが綺麗に出るようにこだわってお願いしました。

オーダーを体験する前は、体のシルエットを出したいために無理にきついスーツを着ていたんです。胸回りや腕が特に発達しているので、細身で着ることができて体にフィットするシルエットは既製品だと難しいんですよね。初めて、ジャストフィットがどのようなものかわかりました。

受賞式での羽根田さん、とても素敵でした。

インタビューを通して、これまでもこれからも変わらないカヌーへの内なる熱い想いをお伺いできましたが、自分らしさを体現できる一つの勝負服としてこのスーツが羽根田さんを後押しするものになれば嬉しいです。

羽根田さん、ありがとうございました!

 

 

-編集後記

インタビュアー:

仕事においても、明確な目標を立てそこから逆算し、いかに具体的に動けるかが求められますが、世界水準で活躍するために言葉も通じない国へ単身で渡った羽根田さんの言葉には、節々に「覚悟」が感じられました。

「努力が実らなくても、悲観的にならないこと。大事なのは、うまく行かなかった際の自分や環境を俯瞰してみること」という言葉は、多くの人に届けたいパワーワードですね。これからも応援しています!(FABRIC TOKYO 張)

採寸者:

肩周りはとてもがっしりしていますが、ウエストがかなり細いです。このような体系は、スーツを選ぶ際に肩周りに合わせるとウエストがぶかぶかになってしまいがちです。今回、羽根田さんの鍛えられた身体を活かせるように肩周りを少しタイト目にしてウエストを絞るように調整しました。パンツは羽根田さんのスタイルの良さを活かせるよう、膝と裾を絞ったテーパードシルエットにしました。(FABRIC TOKYO 五木田)

 

羽根田 卓也
カヌー選手
スポーツ一家に生まれ、7歳のときに器械体操を始め、9歳のときに元カヌー選手だった父の影響でカヌーを始める。 高校卒業後、カヌーの強豪国スロバキアに単身渡り、2009年にコメンスキー大学体育スポーツ学部に進学。/2014年仁川アジア大会 金メダル/2016年リオデジャネイロ五輪 アジア初の銅メダル