創業127年の老舗生地メーカー「ニッケ」が目指す、究極のベーシックな一着。その魅力と裏側を徹底解説

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近年、働き方の変化や仕事着のカジュアル化によって、仕事 = スーツだけではなくなってきましたね。

ビジネスカジュアルを導入している企業でしたら、昔と比べて、スーツ以外で仕事をするのが当たり前になっているかと思います。

しかし、大事な商談やプレゼン、さらに結婚式などの式典など、ここぞという時の一着はスーツでビシッと決める、という方も多いはず。

もし一着だけスーツを仕立てるのであれば、確かなもの、長く使えるもの、愛着の湧くものが欲しいですよね。

今回はそんな方に向けて、歴史と伝統の詰まった日本の生地メーカー「ニッケ」をご紹介します。

日本のものづくりの魅力、究極のベーシックとなりうる要素、ウールという素材の不思議な力を徹底的に深堀りしていきます。

納得のいく一着を手に入れたい方は必見です!

この記事を監修した人鈴木 日出海|ANSWER 編集部

デザイナーズブランドからビジネスウェアまで、10年以上の接客経験を経て、現在ANSWERの記事を執筆。 わかりやすさを大切にしています。 趣味は70年代のロック。

1. 日本毛織(ニッケ)とは

まずは今回ご紹介する生地メーカー、日本毛織株式会社の歴史とストーリーについて解説します。

1-1.【明治創業】ウールと向き合う老舗生地メーカー

日本毛織株式会社は1896年(明治29年)創業の日本の老舗毛織物メーカーで、ニッケの愛称で親しまれています。 紡績・染色・織り・整理加工までを一貫して行い、毛織物の中でも、特にウール由来の素材開発に力を入れ、ウールの魅力を追求し続けています。 そのクオリティの高さから、国内の学校や官公庁向けの制服に取り入れられただけでなく、現在では日本のデザイナーズブランドや海外のメゾンブランドにも採用されるなど、国や世代を超えて高い評価を得ています。

1-2.【MAF®】ウールの発展に貢献した最高品質の生地

今回FABRIC TOKYOで取り扱うMAF®(マフ)は、日本毛織の最高品質生地であるだけでなく、ニュージーランドウールの発展に貢献した、歴史的な意義も高い生地となっています。

1980年代、カーペット向けの太いウールが輸出の大半だったニュージーランドでは、世界市場で戦える細い繊維のウールを必要としていました。

そんな中、国際プロジェクトとしてニュージーランド政府から要請を受けたのが日本毛織でした。

品種改良を重ねに重ね、そうして世界に先駆けて完成したのが、「カシミヤ級の細さを持つ最高品質エクストラスーパーファイン・ニュージーランドメリノウール = MAF®」です。

ニュージーランドならではの多様な自然風土が育てたメリノウールは、なめらかさと弾力性に富み、白さの程度を表す白度(はくど)が高く、美しい色に染まりやすい特長があります。

こうして、多大な尽力によって良質な超極細羊毛の生産が安定化したこともあり、日本毛織は現在においてもニュージーランドの人々から感謝の気持ちを伝えられています。

MAF®の由来

MAFの名称は、元々ニュージーランド農水産省技術局(Ministry of Agriculture and Fisheries technology = 通称 MAF tech)に由来し、その後、MAF® (Merino Authentic Fine)と改称して、現在に至っています。

1-3.【ZQ認証】この生地を選びたいと思える信頼の証

MAF®はザ・ニュージーランドメリノ・カンパニー・リミテッドが認証する制度、「ZQ(ジーキュー)認証」を取得した原料を使用しています。

元々ニュージーランドの羊毛生産農家は、水質や土壌の環境保全、羊の健康管理、作業の安全性などの取り組みを、家業として子や孫の世代にわたって実直に行ってきました。

例えば、羊の群れが川を渡るときは生態系に影響が無いよう、水が濁らないようにするなど、細かい部分にまで配慮をしていましたが、一方でこうした努力や取り組みを客観的に評価する仕組みはこれまでありませんでした。

そうした中で2006年、使用される原料が確かなものであること、サステナブルであることを証明する認証制度である「ZQ認証」が作られました。

ZQ認証は「正しく作られたものを最後まで正しく届けたい」羊毛生産農家と、「確かな良いものを選んで大切に使いたい」最終ユーザーの、それぞれの想いをつなぐ大切な役割を果たしています。

2. NIKKE MAF PREMIUM WOOLの魅力

ニッケのストーリーを知っていただいた上で、ここからはFABRIC TOKYOで取り扱う「NIKKE MAF PREMIUM WOOL」の具体的な魅力について、さらに詳しく解説します。

2-1. 日本の気候に合った保形性

写真はチャコールグレー

スーツの生地は、大きく分類するとイタリア式とイギリス式に分けられます。

イタリア式
  • 繊維の細い糸を使用し、柔らかく濡れたような光沢があるのが特長。華やかで発色のきれいな生地が多い。
イギリス式
  • 生地の密度が高く、丈夫でしっかりしているのが特長。マットな質感で、堅実な生地が多い。

MAF®は主にイギリス式の生地設計を採用しており、双糸(そうし)と呼ばれる、2本の糸を撚り合わせた強い糸を、経緯(たてよこ)それぞれに使用。

生地の密度が高い分、丈夫でしっかりとした作りとなっています。

元々、ニッケは長期の着用に耐えうる制服を得意としていたこともあり、MAF®もまた日々着用していても型崩れがしにくく、丈夫でキレイが長持ちする保形性が魅力です。

また、吸湿性も非常に高く、ヨーロッパに比べて蒸し暑い日本の環境においては、実着用の面でも適しているといえます。

2-2. 主張を抑えた奥ゆかしい光沢

ネイビー系のラインナップ

一般的にイギリス式の高密度な生地は、光沢が鈍りやすくマットな見た目になります。

しかし、MAF®の場合は、元々の繊維が非常に細いため、高密度に糸が詰まっていながらも「生地の奥」から光沢が生まれ、味わい深い表情を作り出します。

チャコールグレー

奥から滲み出てくる光沢には、主張を抑えた高級感があり、どこか日本的な奥ゆかしさも感じられるのが魅力です。

細い繊維による肌あたりの良さは、イギリスよりもむしろイタリアの生地に近いため、MAF®はイタリアとイギリスの良いとこ取りをした生地といえます。

2-3. 確かな一着となるダークカラー

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写真はチャコールグレー

「NIKKE MAF PREMIUM WOOL」で展開する7色は、どれもFABRIC TOKYOのオリジナルカラー。ビジネスウェアとして使いやすいものを、今回セレクトしました。

その中でも圧倒的におすすめなのが「ダークネイビー」と「チャコールグレー」。
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(左)ダークネイビー/(右)チャコールグレー

それぞれ、FABRIC TOKYOの数ある生地の中でも、「黒」と言えるくらいの濃さが特長。シンプルがゆえに、生地そのものの良さが際立ち、シャープで洗練された印象を与えます。

特にチャコールグレーは、グレー生地特有の白糸の混じった杢(もく)っぽさが非常に少なく、均一で整った表情。きれいな印象で、周りのグレースーツと差をつけられます。
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(左)通常のチャコール/(右)MAF®のチャコール

結婚式などの式典の参列にも適しているので、ビジネスとの兼用で一着持ちたい方には特に使いやすくおすすめです。
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親族の結婚式など、格式が高めのシーンにもおすすめ

ダークネイビーのツーピーススーツ

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日本毛織の最高品質生地を使用。海外のインポート生地に負けないクオリティでありながら、国産生地のため、コストを抑えられているのも魅力の一つ。ダークネイビーは誠実な印象を与えたい方におすすめ。

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チャコールグレーのツーピーススーツ

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日本毛織の最高品質生地を使用。海外のインポート生地に負けないクオリティでありながら、国産生地のため、コストを抑えられているのも魅力の一つ。チャコールグレーは落ち着きのある印象を与えたい方におすすめ。

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3. 体験して、あらためてわかったウールの凄さ

「ウールってどんな生地?」と言われると、意外とわからない方も多いのではないでしょうか。

ここからはウールの魅力を追求し続けるニッケの課外活動についてご紹介し、そもそものウールという素材の魅力について、深堀りしていきたいと思います。

3-1. ウールの「伝道師」としてのニッケ

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ニッケは毛織物を取り扱うリーディングカンパニーとして、全国の中学・高校を対象に、「ウールラボ」という独自の教育プログラムを実施しています。

これは、実験を交えながら繊維の知識や衣服の取り扱い、さらには衣服と環境の問題を広く周知する活動となっています。
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さまざまな部署から参加がありました

今回はFABRIC TOKYOのオフィスにお越しいただいて、FABRIC TOKYO社員が中学生になった気持ちでウールラボを体験してみました。

3-2. キレイが長持ちするウールの秘密5選

feature-on-nikke-wool23もしウールの特長をたったひとことで表すとしたら「キレイが長持ちする」といえます。

今までウールは価格が高いから避けていたという方も、これを見ていただければ長期的なコストパフォーマンスの良さに気付いていただけるはず。

ぜひ、この機会に理解を深めてみてください。

①ウールはそもそも汚れにくい

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ウールは「コルテックス」と「スケール」の成分から成る

ウールの繊維は、スケールと呼ばれる魚のウロコのような固い膜で覆われています(人間の髪の毛でいうところのキューティクル)。

このスケールには撥水性があるため、水を弾いてくれるのと同時に、汚れが中に染み込みにくいというメリットがあります。
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水が染み込む綿(左)と、染み込まないウール(右)

うっかり食べ物や飲み物を落としてしまった時でも、ウールの場合はそもそも汚れが中に浸透しにくいので、表面に付いた汚れを振り落とせばOK。

実はケアをそこまで気にしなくて良いのが嬉しいポイントです。

②汗をかいてもジメジメしない

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ウールの主成分である2種類のコルテックス

スケールの中に隠れているウールの主成分「コルテックス」は湿気を吸収する力があります。

汗をかいて蒸れるとスケールが開いて湿気を吸い込み、乾燥すると今度は湿気を放出してスケールが閉じるような働きをします。

ウールの吸湿性は綿の約2倍、ポリエステルの約40倍とも言われており、汗をかいても汗冷えせず、サラッとした着心地が継続します。

③消臭性が高く、毎日の洗濯は不要

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ウールはアルカリ臭も酸性臭も消臭してくれる

コルテックスは汗を吸収するのと同時に、「匂い」も吸収してくれるのがポイント。

実際にアンモニアを使って実験をしてみたところ、ウールは多量の匂いを吸収したにも関わらず、綿やポリエステルに比べてほとんど匂いが再放出されませんでした。
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ウールとは対照的に、綿とポリエステルは匂いが強烈!

匂いを吸収する限界量は人が発散する量に比べて遥かに高いとのことで、夏の汗が気になる方でも安心。また、他の衣服への匂い移りの心配もありません。

最初にご紹介した「汚れにくい機能」と合わせて考えると、ウールは着る度に洗濯をする必要がないことがよくわかります。

④冬だけでなく、夏も快適

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麺のように縮れているクリンプ(写真左下)

ウールは冬だけでなく、実は夏も快適な生地。その秘密は「クリンプ」にあります。

クリンプとは、2種類のコルテックスの成長速度の違いから生まれた、くるくるした縮れのことです。

縮れたラーメンの麺がスープとよく絡むように、クリンプの縮れもまた、たくさんの空気を絡ませ、空気の層を作っていきます。

この空気の層は熱の伝導率が低いため、冬は空気を溜めて寒くなりにくく、夏は断熱材のような働きをして暑くなりにくいという特長があります。

前述した吸湿性も含めると、ウールは天然の湿度調整機能が備わっているため、シーズンを問わず、常に快適な状態が続く素材といえます。

⑤シワが戻りやすい

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一晩グシャグシャに放置したウールとポリエステル

ウールのクリンプはバネのように伸び縮みするので、そもそもシワになりにくく、またシワになったとしても、高い回復力を見せてくれます。

ハンガーにかけておけば、部屋中の湿気を吸って、徐々にシワが回復。仮にシワが強い場合でも、水蒸気を当てることで繊維が膨れて徐々にきれいな状態に戻っていきます。

ポリエステルもシワにはなりにくいものの、一度シワが強く残ってしまうと、元に戻らない性質(塑性変形)があるため、長期で見るとウールの回復力はとても魅力的といえます。

普段のケアはハンガーとブラシだけ

feature-on-nikke-wool19ウールのスーツはクリーニングに出すから、手入れが面倒だと思っている方も多いのではないでしょうか?

実は普段のケアはハンガーとブラッシングのみでOK。その理由を今までの内容からまとめると、以下になります。

  • 汚れがそもそも中へ染み込みにくいので、表面だけブラッシングすればOK
  • 汗をかいても匂いを吸収してくれるので、毎日の洗濯が不要
  • 部屋の湿気を吸ってシワを自然に回復してくれるので、基本はアイロンいらず
天然の優れた機能性があるので、実はそんなに手間がかからないことがわかります。

クリーニングは生地の風合いを損なう恐れもあるため、頻繁に行わず、基本的には1シーズンに1回くらいがおすすめ。

ウールのスーツは連続着用を避けて、きちんとケアをすれば10年選手としても使用可能です。

3-3. 人、羊、地球、みんなが幸せになれる素材

ウールはサステナビリティ(持続可能性)の面でも非常に優れた素材です。

羊の毛は刈っても再び生えてくるので持続性が高く、さらに天然のタンパク質からできているので、土壌でも水中でも完全に分解され、地上にゴミとして残りません。

また、そもそも羊の毛は伸ばし続けると羊の健康状態を危うくしてしまう危険性があるため、羊にとっても刈った方がメリットが大きいといえます。
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毛刈りをイヤがって、40kgの毛を背負ってしまった羊

牧場で刈り取られて、服になると高い機能性を発揮して、役目を終えたら自然に還る。

これは1万年前から続く、人と羊の歩みであり、今後も恒久的に続く自然の営みです。

ウールを選ぶということは、人にも羊にも地球にもやさしい選択だということが、このワークショップを通じてあらためて理解できました。

ウールについて、さらに詳しく知りたくなった方は「ウール博士のウールブログ」もご覧ください。

今回のウールラボを担当してくださったニッケのウール博士こと田先さんが、ウールの秘密をわかりやすく解説してくれています。

4. まとめ

ニッケのウールの魅力について、歴史や取り組みを交えながらご紹介しました。

海外の有名インポート生地と比べても遜色のないクオリティでありながら、日本らしい奥ゆかしさを兼ね備えた生地は、ここぞという時の一着が欲しいという方にぴったりです。

今回、私たちFABRIC TOKYOのスタッフが、ニッケの担当者さんとお話しして感じたことは「ウールにまつわる全ての人の努力を、一つも損なわずに届ける」という使命感を持たれていることです。

作られた経緯や歴史を理解し、その上で選択をしてもらうことは、選ぶ方にとっても「確かな満足感」につながるはず。

NIKKE MAF PREMIUM WOOLを通して、ぜひ「知って身にまとう喜び」を感じてみてください。

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チャコールグレー
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