ミラノファッションウィーク2025春夏|展示会
2024年の6月に開催された、「ピッティ・ウオモ」と「ミラノファッションウィーク」のレポートをシリーズで全8回にわたってご紹介します。
取材は、今回も現地在住ライターの田中美貴さんにご協力いただきました。
ビジネスファッションをより楽しんでいただけるような、メンズドレスのトレンド情報をお届けします。
※全シリーズをご覧になりたい方はこちら。
ファッションウィーク中は、ランウェイショーだけでなく数多くのプレゼンテーションも行われるが、イタリアファッション協会の発表によると、今回のミラノファッションウィーク中では、43のプレゼンテーションが開催されたそうだ。
イタリアは素材やモノづくりを売りにしている国であるせいか、それを物語るべく実物を近くで見せるプレゼンテーション形式でコレクションを発表するブランドが多いと言われている。
そこで今回は気になったプレゼンテーションについてレポートする。
まずはスーツ界の最高峰と言われる老舗「ブリオーニ」。
1945年の創業当時、英国仕立ての重いスーツが主流だった時代にエフォートレスで軽いスーツを提案して一世を風靡した。
全体的なトレンドとして “軽さ” が注目されている今シーズン、常にそれを追求してきた「ブリオーニ」にとっては、まさにお得意とするところだ。
ボロメオ・ダッダ宮という18世紀の建物の中庭にてプレゼンテーション形式で発表したコレクションは「Living elegance (エレガンスを生きる)」がテーマ。
軽さと「ブリオーニ」らしいエレガンスを現代のライフスタイルに合わせた、ノンシャランなスタイルを提案した。
テーラリングではアンコン仕立てのブレザー、滑らかなフォルムのトレンチコートやブルゾンなど自然な脱構築的シルエットだ。シャツ、ジャケット、そしてネクタイまでもスーツと同素材で仕上げたモダンな提案もある。
ボトムスはハイウエストのトラウザーや、ゴム仕様でリラックスしたタイプのパンツ、またはショーツやサイドシームの入ったスポーティなデザインと合わせている。
レジャーやスポーツウェアでは、柔らかいナッパレザーのジャケットやパンチング加工のスエードジャケットやシャツが登場。
イブニングではニットのディナーシャツや、ロイヤルブルーのモアレ素材のタキシード、約10,000個の光沢のあるビーズに手作業でシルク糸の刺繍を施した黒のダブルブレストのディナージャケットなどが揃った。
また来年80周年を迎える「ブリオーニ」は、その歴史を物語る一部である1952年の史上初のメンズ・ファッションショーがフィレンツェのピッティ宮殿のビアンカ広間で開催されたことに因み、白を基調としたアイテムの特別展示も行った。
Courtesy of:Brioni
そして、ますますスタイリッシュになった「ラルディーニ」にも注目だ。
1978年にフィロットラーノ(アンコーナ)にて創業し、1998年よりオーナー兄弟のファミリーネームを冠した自社ブランドをスタートしてからは、その確かなモノづくりと、センスのよさであっという間に人気ブランドに。
最近では新コレクションの発表の場を「ピッティ・ウオモ」から発表の場をミラノに移している。
今シーズンはプレゼンテーションの会場として、ミラノでも話題のポートレートホテルのバーを選び、緑あふれる中庭にフィッティングモデルを配置して新コレクションをお披露目した。
コレクションでは “軽さ” をテーマにしているが、それは物理的な面だけではなく、物事を重く考えすぎないことの大切さも意味している。
ゆえに、コレクションはリラックスしたスタイルを明るい色で展開する。
カラーパレットはマリンブルー、セージグリーン、アンティークピンク、乳白色、ライトグレー、サンドベージュなどの優しい色を多用し、リネン、シルク、リネンシルク混やリネンウール混などの流れるような感触の生地を多用している。
フレンチ リヴィエラのイメージで、アンコンジャケットやゆったりしたタック入りパンツ、開襟シャツなどリゾートテイストのあるアイテムが登場。
スーツの代わりとなるような、シャツやジャケットと同じトーンのネクタイのコーディネートや、トップス、ポロシャツ、カーディガンのセットアップも提案している。
Courtesy of:Lardini
さらに、「カナーリ」の90周年アニバーサリーも話題となった。
同ブランドはミラノ近郊のトリウッジャ(モンツァ)にて1934年に創業した老舗だが、早い時期から機械による裁断を取り入れた革新的な方針を進めてきた。
完全イタリア製にこだわり、テーラリングの伝統と質を守りつつ、カジュアル&スポーティなアイテムにも力を入れている。
「カナーリ」はミラノファッションウィーク初日に、王宮にて90周年のアニバーサリーパーティを行い、これを祝したカプセルコレクションお披露目。
美術大学の学生とのコラボで、アニバーサリー生地とコレクションアイテムを使用した彫刻インスタレーションやデジタルAI生成のナラティブを行った。
一方、新コレクションは18世紀にフランス大使館として建てられた建築物、ボヴァーラ宮にてプレゼンテーション形式で発表。
インスピレーション源となっている「湖畔で過ごすバカンス」を彷彿させるような、水辺にモデルたちが並ぶ演出がなされた。
シャツジャケットや縫い目の見えないダブルフェイスのジャケットをテーラリングの主役にしたり、フィールドジャケットとパンツのセットアップをスーツのようにコーディネートし、軽くリラックスしたスタイルを提案。
ボトムにはカーゴパンツやドローストリングスパンツ、ショーツなどカジュアルなものも多い。
素材は湖畔の邸宅のホームリネンを思わせるような軽いウールやストライプのリネンなどが使われる。
またクロスステッチ、ハニカムステッチなど様々な種類のニット類も登場した。
Courtesy of:CANALI
今シーズンも圧倒的な数の新作を披露し、プレゼンテーションは大盛況だった「イレブンティ」。
2006年創業の比較的新しいブランドながら、モノづくりや素材にこだわりつつ、トレンドをほどよくコレクションに取り込んだコンテンポラリーなデザインで、ますます好調な様子だ。
今シーズンは「ビーチクラブ」をテーマに、セーリングのイメージで、ラグジュアリーなリゾート感溢れるコレクションを発表。モダンなテーラリングにスポーツウェアのテイストをプラスしている。
リネンとシルク混、またはリネン、シルク、ウール混の軽い生地やオーバーダイを施した風合いのある生地がジャケットやセットアップとして登場する。それらをカシミアやスエードのパデットジレや、フーディ、ニットポロなどとコーディネートしている。
またボトムにはショーツやドローストリングスパンツ、オーバーダイを施したデニムトラウザーを合わせる提案も。
カラーパレットはオフホワイト、ベージュ、グリーン、サンド、ダスティブルーなどのニュートラルで柔らかいトーンにモーブを効かせ色として使っている。
もちろんマリンスタイルを象徴するネイビーと白のコーディネートもマストだ。ビーチクラブのテーマに合わせてエンブレム付きのコットンニットのネイビーブレザーも登場している。
またスポーツのカプセルコレクションを発表するブランドが多い中「イレブンティ」もゴルフコレクションをローンチした。
大学卒業後、雑誌編集者を経てイタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、デザイン&インテリア、カルチャー、食、旅などの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。コレクション取材歴は20年。TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントオーガナイズやPR、カタログ作成や翻訳なども行う。
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