ピッティウオモ2025春夏|現地取材で見えた最新トレンドを解説 #2
2024年の6月に開催された、「ピッティ・ウオモ」と「ミラノファッションウィーク」のレポートをシリーズで全8回にわたってご紹介します。
取材は、今回も現地在住ライターの田中美貴さんにご協力いただきました。
ビジネスファッションをより楽しんでいただけるような、メンズドレスのトレンド情報をお届けします。
※全シリーズをご覧になりたい方はこちら。
去る6月11日から14日まで開催された第106回「ピッティ・イマージネ・ウォモ(以下ピッティ・ウオモ)」のレポート第二弾。
第一弾ではテーラリング系のブランドに触れたが、第二弾では特に日本からの出展ブランド、サステナビリティに関する話題を中心に、気になった動きをリポートする。
今や、ファッション業界全体が避けて通れない課題となっているサステナビリティだが、「ピッティ・ウオモ」では、1年ぶりに「S|Style」が復活した。
この「S|Style」とは、グローバル・ラグジュアリー・グループ「ケリング」が、サステナビリティに注力する若手デザイナーをサポートする企画だ。「ピッティ・ウオモ」会場内に特別展示スペースを設け、初日にはミニショーも行われた。
中でも注目なのは、ウガンダのデザイナー、ボビー・コラドによる「ブジガヒル」。
支援目的でウガンダに送られてくる古着は、実は過剰気味で処理に困っていたり、現地の産業発展の邪魔をしているという現実に着目し、古着の素材を使ってデザインし、現地で生産しているブランドだ。
高島屋とのコラボで購入型クラウドファンディングを行い、オンライン上で販売も行った。秋にはデザイナーも来日し、新宿高島屋にてポップアップショップを開催する予定だとか。
Courtesy of:Pitti Immagine Uomo
昨今、「ピッティ・ウオモ」では日本ブランドの出展がますます増えている。
今回、熊本を拠点に2022年に始動、今年1月に直営店をローンチした新ブランド「UBUSUNA」が初の参加を果たした。
ブランド名は「産土」からの由来で、生まれた場所、土着という観点に焦点に当て、土着の素材や職人技を復活させ、守っていくことでリジェネラティブ(再生性)を実現する。
故に、素材はブランドの本拠地、熊本(および九州)で生産されるものを使い、手仕事による生産環境に配慮したモノづくりを目指している。日本に受け継がれてきた古典的な美しさに注目し、それをモダンに仕上げたジェンダーレスなデザインが特徴だ。
熊本井寺古墳の壁面の文様「直弧文」をパターンに使用し、自然崇拝(アミニズム)の価値観を、しめ縄のようなディテールを使うことで表現したり、日本人が大切にする水の流れを襟のフォルムに生かすなど、ミニマルな中に日本的な要素が生きる。
今回4度目の出展で、その存在感も定着してきた「Jクオリティ」。
全ての生産工程が日本製であることを証明する表示制度をクリアした会社たちの統一ブランドとして世界市場の開拓を進める。
今回は「サンライン(in-a Ka-Date)」、「マルチョウ(GOODPEOPLE GOODSTITCHING GOODPRODUCT)」、「丸和ニット(Balancircular)」、「大河内メリヤス(IDEAL Pull-over)」、の4社が製品を発表。
例えば、「マルチョウ」は独自に開発した機械で縫い代を最小限に抑えることを可能にし、それをデザインに生かしたり、縫い代が少ない分、より軽くできることで今シーズンのトレンドにもマッチした製品を揃えた。
「丸和ニット」も同様に、機械から開発した世界で唯一の編み機によって作られた独自素材「バランサーキュラー」による、ストレッチ性もあり、洗濯機洗いもできるアイテムを発表。日本のテクノロジーを駆使したモノづくりの素晴らしさをアピールした。
「ピッティ・ウオモ」でお馴染みの日本ブランド勢は、デザインや機能性だけでなく、サステナビリティにもさらに注力している。
日本が誇るスポーツアパレルメーカー「ゴールドウイン」は全製品PFAS(有機フッ素化合物)フリーで商品展開。パフォーマンスとデザインの両面の充実を図る。
防水透湿素材「パーテックス」を使ったアイテムがさらに充実し、スプリングコートとしても活躍するフーデッドコート「パーテックスシールドコート」やマウンテンパーカのようにスタイリングにアクセントを与える「パーテックスシールドボレロ」が登場。
パンツ類を強化し、リサイクルポリエステルと紙糸の混紡糸を交織したジャケットとパンツのセットアップを提案する。
シャツ類も充実し、テンセル、ウール、紙糸を掛け合わせたオーバーシルエットのシャツや、リサイクルポリエステルとリネンの混紡糸と、紙糸を交互に配列し交織したチェックシャツなども展開。
Courtesy of:GOLDWIN
「ナナミカ」もデザイン性を損なうことなく、素材をサステナブルなものに移行させている。
今シーズンは「ONE OCEAN, ALL LANDS(海は一つで世界は繋がっている)」というテーマで、海を感じさせるリラックスした雰囲気のコレクションを展開。
いつものように3つのシーンを想定し、一つは海を愛する都会で働くクリエーター向けのカテゴリーで、PFC(パーフルオロ化合物)フリーのゴアテックス製品や2通りの着丈にアレンジできる3レイヤー「パーテックス」コートなど、サステナブルに注力したアイテムが揃う。
二つ目は65/ 35 ベイヘッドクロスを使用したフーデッドジャケットやリバーシブル仕様のウインドブレーカーなど休日のリラックススタイル、そして、コアヤーンをリサイクルポリエステルやオーガニックコットンでアップデートさせた「ナナミカ」の定番的アイテム達も加わる。
「ピッティ・ウオモ」出展8回目を迎える「D-VEC」は、フィッシングメーカー「DAIWA」を母体に廃棄漁網から再生したファブリックをはじめとするリサイクル素材を使用したモダンなコレクションで知られるブランドだ。
今回の展示では撥水性の高いリサイクルナイロンタフタにライクラを入れたストレッチ素材のアイテムなど、得意のサステナビリティ製品もありつつ、テーラードスタイルをアップデートしたソフトテーラードのアイテムや、海の流れをイメージしたプリントなど、よりファッション性の高いコレクションを展開した。
大学卒業後、雑誌編集者を経てイタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、デザイン&インテリア、カルチャー、食、旅などの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。コレクション取材歴は20年。TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントオーガナイズやPR、カタログ作成や翻訳なども行う。
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