
楽天ファッション・ウィーク東京2026|春夏の最新トレンドを徹底解説 #2
2025年の9月に開催された、「楽天ファッション・ウィーク東京」のレポートをシリーズで全2回にわたってご紹介します。
取材は、イタリア在住ライターの田中美貴さんにご協力いただきました。
ビジネスファッションをより楽しんでいただけるような、メンズのトレンド情報をお届けします。
※全シリーズをご覧になりたい方はこちら。
2025年9月1日から6日まで、「楽天ファッション・ウィーク東京」が開催された。今シーズンは公式のショーをフィジカルのみ(前シーズンまであったデジタル発表はナシ)とし、計24のショーを行った。
その中から、メンズブランドを中心にいくつかのショーをピックアップしよう。
アンセルム(ANCELLM)
Courtesy of:ANCELLM
デザイナー 山近 和也による「アンセルム」。“視点を変えた経年変化の提案 "をコンセプトに、拠点としている岡山・児島の職人による加工を武器にしたヴィンテージ風のテイストで知られる。
「楽天ファッション・ウィーク東京」初参加となる今シーズン、新宿・住友ビルの三角広場にてショーを開催した。
「クラフトによって服をデザイン的にエイジングさせる」というアプローチをふんだんに生かしたコレクションでは、全体に長年着込んだような質感をもたせ、独自に調合した色を幾層にも重ねることで、水彩画のような色あせたトーンを漂わせた。
Courtesy of:ANCELLM
ワーク、ミリタリー、スポーツ、テーラリングといった様々な要素はあるが、いずれのルックも裾や袖はほつれ、膝の部分は擦り切れた破れたような加工や、ロールアップされた袖の部分から色落ちしていない部分が見えるようなコーディネートがなされる。
全体的にゆったりしたシルエットで、レイヤードを多用した肩ひじ張らない雰囲気が流れる。
そんなショーでは「自ら胸を張って誇れるチームで培った技術を、ANCELLMを通して世界へ伝える、という意志をこのショーで表現した」のだとか。
オリミ(ORIMI)
Courtesy of:ORIMI
もうひとつの初参加ブランドである「オリミ」。
「楽天ファッション・ウィーク」のフィナーレとして、渋谷・ヒカリエにてショーを行った。
「オリミ」は、デザイナーの折見健太がヴィンテージバイヤーやアパレルストアの立ち上げから運営、商品企画、バイイングを経験したのち、「異端者のための上質な服」をコンセプトに立ち上げたブランドだ。
既存の構造を解体し独自の新しいバランスを再構築するアプローチで知られる。
今シーズンは“ELSEWHERE”というテーマで、“ここではないどこか”、“日常と地続きの非日常”を表現した。
Courtesy of:ORIMI
「自分の中の東京への帰属意識と孤立感が同居する感情が、新たなプロポーションの探求へとつながった」と言う折見は、快適で正しい服が求められる時代において、あえてそこにエラーやノイズを挿入することで、個性や違和感を肯定する。
テーラードジャケットはフロントボタンの位置を歪めて肩が大きく強調される。
ジャケットとパンツを合体させたジャンプスーツやクラシックなメンズ生地で作られたフーディ、トップスに一体化されたネクタイなどにはミックスや崩しが加えられている。
シャツやジャケットはワイヤーを裾に縫い込むことで、波打つような不思議な動きのあるシルエットに。
股上が極端に深いパンツや、ラッピングや切りっぱなしなどの個性的なディテールを利かせたパンツも登場する。
また重ね付けしたベルト、パンツの裾に巻き付けたストラップ、肩に張り付いたようなバッグなど、アクセサリー類にも不均衡さを漂わせていた。
ファンダメンタル(FDMTL)
Courtesy of:FDMTL
今回が3回目のショーとなる「ファンダメンタル」。
デザイナーの津吉学が2005年にスタートしたブランドで、日本製デニムを中心に少量生産だからこそできる、こだわりのもの作りを展開する。
このコレクションでは、「これまで自分を“服屋”と呼んでいたが、20周年を迎えて、2回のショーを経験した今、“ファッションデザイナー”と名乗ることにした」という津吉が、“Echo of [ ]([ ]のこだま)”というテーマで、改めて“自分は何者か”を考察したのだとか。
コレクションは「ファンダメンタル」の真髄であるインディゴに焦点を当て、トーンの違う洗いや染め、ステッチやパッチワークなど様々に展開する。
Courtesy of:FDMTL
Courtesy of:FDMTL
特に激しいダメージ加工がなされたシリーズは、クラフトを得意としてきた「ファンダメンタル」の真価を物語る。
また藍のサテンや、デザイナー本人がコレクションしているぼろを転写したメッシュのアイテムなど、蒼を基調にクリエーションが繰り広げられる。
そこにパンツやスカートになるジャケット、ジャケットになるパンツ、またはポケットや袖をデフォルメした遊びのあるデザインも見られた。足元には2015年からコラボしているVANSの藍染シューズをあわせている。
“こだま”というテーマにちなんで、川谷絵音も参加するバンド、ichikoroによる生演奏がランウェイショーと響きあっていた。
ヨシオクボ(yoshiokubo)
Courtesy of:Runway Photography / Shun Mizuno
Courtesy of:Runway Photography / Shun Mizuno
これまでのショーでも吉本新喜劇、浅草花やしきといった異例のショー会場、および演出を行ってきた「ヨシオクボ」。
デザイナーの久保嘉男は、ニューヨークでロバート・デニスの元でアシスタント・デザイナーを経験した後、オートクチュールの服作りのキャリアを積み、2004年に帰国して「ヨシオクボ」をスタート。
東京コレクションには2009年にデビューし、その後、ミラノやパリでもコレクションを発表したのち、最近では再び東京でショーを行っている。
今回は、ブレイキンバトル「レッドブル ビーシーワン(Red Bull BC One)」とのコラボで、ステージ中央で12名のダンサーによるダンスバトルが繰り広げられる中、その周りをモデルが歩く演出によって、ファッションとブレイクダンスを融合させた。
Courtesy of:Red Bull BC One Photography / Cozz
コレクションではストリートダンサーの動きや身体表現からのインスピレーションで、動作に応じた服の見え方やドレープの生まれ方を追求した。
「流れるような静と動を辿り描いた“切り替え”、瞬間ごとに変化するシルエットをキャプチャリングして落とし込む“テクニカル”、唯一無二の個を有形化・視覚化した“プリンティング”」の要素が生かされているとか。
飛んだり回ったり走ったり・・・という様々な動きに対応するディテールとしてドレープに焦点を当て、トラッキングスーツのようなスポーティなアイテムにも大胆なドレープを施した。
Courtesy of:Runway Photography / Shun Mizuno
Courtesy of:Runway Photography / Shun Mizuno
ギャザー仕立てでドレープを作っているものもあり、全体的に丸みを帯びたコクーンシルエットで仕立てられていることでモード感も漂う。
またアロハシャツのような花や草木、例のようなモチーフが使われたシャツや、バトルステージからの連想のメーカーのロゴをあしらったキャッチーなアイテムも登場した。
エムエスエムエル(MSML)
Courtesy of:MSML
2017年、現役ミュージシャンのコウジ(KOJI)、ツヨシ(T$UYO$HI)、カツマ(KATSUMA)によって作られた、カルチャーとファッションを融合したデザインが特徴の「MSML」。
“MUSIC SAVED MY LIFE”をスローガン、かつブランド名として使用している。
今シーズンは、六本木ヒルズ・アリーナにて2回目となるショーを発表。
「Tokyo Rollin’(トーキョー ローリン)」というテーマで、静けさと速度、光と影など相対するものが交錯する街・東京を自分たちなりに解釈し、モードの洗練さとストリートのインパクトという両極を表現した。
例えば、ロールアップすると袖や裾からバンダナ柄が見えるシャツとパンツは、整然とした表通りから路地に入るとカオスが広がる東京の街にイメージを重ねた。
Courtesy of:MSML
スローガンの書かれたTシャツやパンツなどストリートテイストの一方で、透け感のあるシャツやメッシュをメンズモデルにも着せたジェンダーレスなルックもありコントラストを強調。
バラのプリントを施した丸襟の白シャツやビジューをあしらったデニムジャケット、各所に使われるスカーフ使いなどにはモード的な要素も見られる。
そして、ウイメンズのコレクションでは、「Mountain Trail(山道)をテーマに、山の爽快な雰囲気をペールカラーやネオンカラーを使い、スポーティかつ機能的なシルエットで表現した、今回初参加の「ナゴンスタンス(någonstans)」、自然との関係をめぐる思考を出発点に、自然を愛し、都市を軽やかに生きる女性像を描いた「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」、骨や血管など女性の体を構成する要素をデザインに落とし込んだ「セイヴソン(Seivson)」、日常服に着目し、当たり前の日常の中の感情や情緒を表現した「ピリングス(pillings)」。
"Neo Romanticism"をテーマに、服の構造や手仕事の痕跡が、人の存在と結びついたときに立ち現れる静かな強さを表現した「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」などが登場した。
セイヴソン(Seivson)
Courtesy of:Seivson
ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)
Courtesy of:HARUNOBUMURATA
ピリングス(pillings)
Courtesy of:pillings
ヴィヴィアーノ(VIVIANO)
Courtesy of:VIVIANO
大学卒業後、雑誌編集者を経てイタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、デザイン&インテリア、カルチャー、食、旅などの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。コレクション取材歴は20年。TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントオーガナイズやPR、カタログ作成や翻訳なども行う。
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