
ピッティウォモ2026|春夏の最新トレンドを徹底解説 #1
2025年の6月に開催された、「ピッティ・ウオモ」と「ミラノファッションウィーク」のレポートをシリーズで全9回にわたってご紹介します。
取材は現地在住ライターの田中美貴さんにご協力いただきました。
ビジネスファッションをより楽しんでいただけるような、メンズドレスのトレンド情報をお届けします。
※全シリーズをご覧になりたい方はこちら。
Courtesy of:Pitti Immagine Uomo
2025年6月17日から20日まで、第108回「ピッティ・イマージネ・ウォモ(以下ピッティ・ウオモ)」が、フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソで開催された。この「ピッティ・ウオモ」とは、毎年、1月と6月に開催される世界最大級のメンズファッション見本市として知られる。
かつては“クラシコイタリア”ブームを牽引し、イタリアのテーラードブランドがメインだったが、最近ではかなりカジュアル&スポーティ化し、外国ブランドが増えて国際化が進んでいる。
傾向は変わろうとも、大手ブランドにとっては新作発表の場であり、新進ブランドやイタリアへの進出を図る外国ブランドにとってはマーケットを広げる場となっていて、「ピッティ・ウオモ」がビジネスコネクション開拓のためのとても重要な機会であることには変わりない。
Courtesy of:Pitti Immagine Uomo
今回は全体のテーマを「ピッティ・バイクス(PITTI BIKES)」とし、さらなるカジュアル&スポーツ化、そしてサステナビリティやライフスタイルとの結びつきも目指している。
「ピッティ・イマジネ」協会の報告によると、出展ブランド数は740で、そのうち45%が海外からの出展。入場者数は15,000人以上、海外からのバイヤーの比率は昨年6月のピッティに比べ3%アップだったとか。
また「ピッティ・ウオモ」期間中に話題のデザイナーを招いて行われる特別なショーやイベントも毎回大きな話題となるが、今回は開催された4つのショー、「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス」、「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」、「ニコロ・パスカレッティ」、「ポスト アーカイブ ファクション(PAF)」の内、3ブランドがアジア勢だった(ショーの詳報は第二弾、第三弾の記事にて)。
特に日本ブランド達の出展は多く、新進ブランドからベテランまで。参加2回目のレザーに注力して様々なアイテムを展開する「エーレザー」は島をイメージした海や砂浜の色使いで、カジュアルアウターからテーラード、タキシードまで揃えた。
15回目となるエミネントのブランド「ループ」からは、シアサッカーに通気のよい穴のような効果を加えたり、絡み織りによる通気性を持つ素材や、薄くて伸縮性のあるジャージー素材をつかったパンツが登場。
「リングジャケット」はリネンやモヘアなどの天然素材に製法によってストレッチ効果を与え、リラックス感のあるドレスジャケットを展開した。
またお馴染みとなった「Jクオリティー(J∞QUALITY)」には、独自開発のミシンによる縫い代がない、仕上げを活かした画期的なアイテムを揃えたマルチョウの「GOOD PEOPLE GOOD STITCHING GOOD PRODUCT」、墨を使った独特のプリントなどオリジナリティのある素材を揃えた山陽染工の「キフ(Kiivu)」、泥染め、藍染めなど天然の染料で染めたシャツを発表した山喜の「蝶矢シャツ」が参加した。
Courtesy of:Pitti Immagine Uomo
全体の傾向としては、軽さやリラックス感の追求が見られた。主力となるリネンおよびリネンのシルクやカシミア混は、コーティングなどの二重加工や織りによるストレッチ加工などで進化。
夏らしい素材であるシアサッカーやソラーロも、シアサッカーはより軽く、ソラーロは織り糸にこれまで使わなかった色を用いたり、チェックなどの柄をいれたり変化を付けている。
その一方で、ゴブラン織りやドネガルツイードなどの本来重い生地を軽く加工して夏の素材として使用しているブランドも見られた。それを白、ベージュ、パステルカラーなどの優しいトーンをメインに、コーラルレッド、アンティークローズ、アプリコットなどニュアンスのある赤からピンクにかけてのトーンの差し色で展開する。
機能性や実用性も重視されており、スーツやセットアップはトップスまたはボトムスだけで着回しで使えるようなアイテムも多くみられた。さらに昨今の観光ブームを反映し、しわにならない生地や耐水、撥水加工など、移動や旅に適した製品の提案も多かった。以下、いくつかの例をご紹介しよう。
イタリア・ソラーニャ(パルマ)発の高級ファクトリーブランド「カルーゾ」は、「プレイフルエレガンス」というテーマでパステルカラーやブルーをキーカラーに、リラックステイストのテーラードを提案。シアサッカーのトラベルジャケットやソラーロのスプリングコートなどが登場する。
「キートン」の傘下のナポリのスーツブランド「サルトリオ」は、ローズや水色、パステルカラーをメインに、ユーズド風のウエスタンシャツや、ネクタイ代わりにスカーフをコーディネートするなどモダンなテーラードスタイルを打ち出した。このネクタイ代わりのスカーフ使いは昨今のトレンドでもある。
イタリア・マントヴァの老舗紳士服メーカー、ルビアム社のカジュアルライン「L.B.M.1911」はクラシックなアイテムをハイテク素材で実現。
またはコットンソラーロのトラベラージャケットやシルクカシミアのサマーニットなどのトップに、ボトムはボリューミーなカーゴパンツ、バミューダなどを揃えた。オフホワイトやベージュに加え、ローズアンティークを差し色に使用。
パンツブランドからトータルで展開している「ブリリア」は、ゴムシャーリングのイージーパンツをメイン押し。ジャケットもストレッチ素材のリラックスしたものを展開し、パンツには細めのクラシックなベルトを合わせる提案も。
「ガブリエレ・パジーニ」は、チェックなどのプリントを加えた新しいソラーロを提案。ドネガルツイードやゴブラン織りなどの冬物のイメージのある生地を軽く仕上げるなど、意外な素材を使用した。
大学卒業後、雑誌編集者を経てイタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、デザイン&インテリア、カルチャー、食、旅などの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。コレクション取材歴は20年。TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントオーガナイズやPR、カタログ作成や翻訳なども行う。











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イタリアの名門生地メーカー Vitale Barberis Canonico(ヴィターレ・バルベリス・カノニコ)と、2024年にサービス開始10周年を迎えた FABRIC TOKYO とのダブルネームにより誕生した特別な生地です。