ピッティウオモ2025春夏|現地取材で見えた最新トレンドを解説 #1

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2024年の6月に開催された、「ピッティ・ウオモ」と「ミラノファッションウィーク」のレポートをシリーズで全8回にわたってご紹介します。

取材は、今回も現地在住ライターの田中美貴さんにご協力いただきました。

ビジネスファッションをより楽しんでいただけるような、メンズドレスのトレンド情報をお届けします。

※全シリーズをご覧になりたい方はこちら


ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

Courtesy of:Pitti Immagine Uomo

2024年6月11日から14日まで、第106回「ピッティ・イマージネ・ウォモ(以下ピッティ・ウオモ)」が、フィレンツェのフォルテッツァ・ダ・バッソで開催された。

この「ピッティ・ウオモ」とは、毎年、1月と6月に開催されている世界最大級のメンズファッション見本市で、元々はここで買い付けが行われていたが、最近では実際のバイングはショールーム等で行い、「ピッティ・ウオモ」は新コレクションをお披露目したり、ブランドのイメージをアピールする場となっている。

それゆえ、来場者たちには「ピッティ・ウオモ」で次のトレンドを探ったり、新しいブランドを開拓しようとする人も多いようだ。またビジネスコネクションを開拓する場でもあり、ここでの出会いを重要視する人たちもいる。

ちなみに、「ピッティ・イマジネ」協会の報告によると、今回の出展ブランド数は790で総来場者数は 15,000人以上だったとか。

トレンドと言えば、長年 “ピッティピープル” と呼ばれる、派手に着飾った人たちのスナップが大流行していたが、今シーズンはかなり少なめだった様子。

コロナ禍で「ピッティ・ウオモ」がサイズダウンして開催されていた当時も健在だった彼らだが、 “クワイエットラグジュアリー” のトレンドが長く続いたせいもあってか、目立ちすぎるのはアウト、という傾向にシフトしているのかもしれない。

会場での展示だけでなく、「ピッティ・ウオモ」期間中に大物デザイナーを招いて行われる特別なショーやイベントも、毎回大きな話題となる。

今回は、スペシャルイベントとして、「ポール・スミス」が31年ぶりに「ピッティ・ウオモ」でコレクションを発表。

ゲストデザイナーの「マリーン セル」と、「ピエール ルイ マシア」がランウェイショーを行った。

また「プランC」は、初のメンズコレクションをお披露目した(これらの詳報は第3弾の記事にて)。

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

Courtesy of:Pitti Immagine Uomo

ところで「ピッティ・ウオモ」は毎回、全体テーマを掲げており、今回は「PITTI LEMON(ピッティ・レモン)」というちょっと意外なお題を掲げた。

“シンプルでありながら多くのセグメントで構成され、甘みと酸味の両方で、はじけるようなエネルギーを与えてくれる象徴としてレモンを主役とした” のだそうで、これに因んで会場の装飾は一面レモンイエローに。

証明写真風の撮影ボックスや、傘や花などの鮮やかな黄色の屋台が各所に設置され、明るく楽しい雰囲気が醸し出されていた。

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

Courtesy of:Pitti Immagine Uomo

そんな「ピッティ・ウオモ」のテーマとリンクするかのように、今シーズンは全体的にカラフルな色使いがトレンドになっている。

まさに「ピッティ・レモン」のような明るいイエローは注目カラーで、他にはライトブルー、ピンク、オレンジ、様々なトーンの白などの夏らしい色が登場している。

エネルギッシュで明るい色を、優しいイメージのパステル系やニュアンスカラーに落とし込んで打ち出しつつ、対照的なブラウンや黒のカテゴリーも儲けているブランドが多い。

そしてもう一つのキーワードとしては、 “軽さ” が挙げられる。

素材や仕立ての工夫によってリラックス感のある、軽くて快適なアイテムの追求がなされている。素材は、リネン、リネンとシルクやコットンとのミックス、シアサッカーやタフタなどが多く登場する。

が、大枠の流れとしてはこれまでの路線が継続しており、テーラリングを軸にディテールやシルエットによってモダンなテイストを加える...といった感じだ。

今シーズンはソフトなカラー展開をしているため、それらをワントーンでコーディネートしてセットアップのように見せたり、シャツジャケットや開襟シャツ(ボウリングシャツなど)を主役にしたり、リラックスしたノンシャランなムード、またはリゾート感がテーラリングにも感じられた。

シャツの提案で気になったのが、「キートン」の傘下であるナポリのスーツブランドで、クラシックな仕立ての技術を生かしながら、モダンなドレススタイルを展開する「サルトリオ」。

今シーズンはよりコンテンポラリーに、ダメージ加工が施されたストリートテイストのテキサスシャツを、スーツに合わせたコーディネートをメインとして打ち出した。

さらにサリアナジャケットは今シーズンも継続し、ベルトで結ぶ着こなしも提案。

そしてシーズンカラーはレモンイエロー。これは「サルトリオ」のロゴに使われている色でもあり、今年のトレンドにぴったりだ。

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

同じく、ナポリの名門サルトリア、アットリーニ家の長男ヴィンチェンツォ・アットリーニによる「スティレラティーノ」もトレンドカラーの黄色をチェックの色やシャツ、ストールなどの差し色で提案。

併せてテラコッタやアプリコット、そしてライトブルーなどの薄めで優しいトーンのニュアンスカラーで展開している。

そして、今シーズンのキーワードは「軽さ」。「軽く、ソフトな着こなしでドルチェヴィータ(甘い生活)を楽しもう」という提案なのだとか。

芯地やライニングを使用したジャケットでも、とにかく軽く仕上げることに注力し、素材もシルク、リネンなどの軽い素材を多用している。

今シーズンは、スポーツをサブテーマとして挙げるブランドが多いが、「スティーレラティーノ」は新たにゴルフのコレクションも発表した。

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

イタリア・マントヴァの老舗紳士服メーカー、ルビアム社のセカンドライン「L.B.M.1911」もイエロー、オレンジ、ベージュ、ライトブルーなどの明るく優しい色でカラフルに展開。

このカラーパレットは映画「オーシャンズ11」のイメージなのだとか。

バミューダ、ワークパンツ、サファリジャケットなど、アクティブなアイテムがテーラリングに活かされている。

今シーズンからはウィメンズコレクションもデビューしている。

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

イタリア・ソラーニャ(パルマ)発の高級ファクトリーブランド「カルーゾ」は「Playful elegance(遊びのあるエレガンス)」をテーマに、エキゾティックな要素も交えながら、遊び心あるコレクションを展開した。

その象徴としてフラワーモチーフが多用され、花のアップリケやコサージュ使い、ジャカードによるフラワーモチーフの生地などが登場。

シアサッカーやリネンシルクを使ったソフトなジャケットが登場する一方で、アイルランドリネンを使用した構築的なジャケットも展開。

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

遊び心という点では、ブランドコンセプト自体が “for smiling people” である「マヌエル・リッツ」が断トツかもしれない。

1970年代にスペインのアーティストからインスピレーションを受けて生まれたブランドで、現在は「パオローニ」の傘下となったブランドだ。

今シーズンはフランス風のワークスタイルをイメージし、フレンチリビエラの明るくリラックスした地中海風テイスト溢れるコレクションに仕上げた。

イエロー、オレンジ、ライトブルーなど今シーズンのトレンドカラーをふんだんに使い、抜け感のあるテーラリングを提案している。

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

ピッティ ウオモ 2025春夏 第一弾

取材・文/田中 美貴

大学卒業後、雑誌編集者を経てイタリアへ。現在ミラノ在住。ファッションを中心に、デザイン&インテリア、カルチャー、食、旅などの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。コレクション取材歴は20年。TV、広告などの撮影コーディネーションや、イタリアにおける日本企業のイベントオーガナイズやPR、カタログ作成や翻訳なども行う。

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ファッションレポート(2024年6月)ピッティウオモ特集
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